魔法の犬の車椅子

去年のある日3件の問い合わせがありました。 たまたま愛知、岐阜県だったので後日直接訪問させて頂きワンちゃんの体の情報と 採寸にお伺いしました。 1件目は愛知県に住んでいるボブ君と出会いました。 先ず驚いたのが、私が出会った中でこんなに大きなコーギーは初めてです。 体重は15kgですが、胴がすごく長いんです。太っている訳でもありません。 顔はとってもイケメン(イケワン?)毛並みは艶々してとても病気とは思えませんでした。 ですが、コーギー特有の変性性脊髄症が発症したそうです。 病名としてはDMと呼ばれています。 痛みを伴わず、ゆっくりと進行する脊髄の病気です。 初めは、ジャーマンシェパードに多い病気として広がったようですが、現在は多くの犬種で 発生が確認されており、近年、ウェルシュコーギーでの発生頻度が高く、 コーギの場合 症状は10才位から現れます。 病気は脊髄の真ん中あたりから始まるので、症状は後ろ足から始まります。 病気が進行すると、病変は脊髄の前の方にも広がり、前足にも同様な症状が現れます。 更に進行すると、病変は首の脊髄にも広がり、声が出なくなり、呼吸にも影響が出て きます。通常、これらの症状は3年位かけて進行します。 未だはっきりとした原因は解明されていません。 そのため、現在における治療は、中々難しいものがあるようです。 確かにボブ君と初めて会った時、鳴き声はワン・ワンではなく低く小さい声で バウ・バウと鳴いていました。病状はかなり進行していると思われます。 ボブ君の飼い主様も毎日後ろ足をバンドで吊り散歩しているそうですが、 あまりの重さで もう腰も限界で車椅子を購入する事に決めたそうです。 2輪車の製作を始め完成も間近、飼い主様より電話でボブ君の症状が悪化 し前足も動きが鈍ってきたそうです。 日に日に様態が悪化するこの病気の怖いところです。 そして4輪車に変更し後日納品にお邪魔しました。P1010940.JPG 押手付きの大きな4輪車です。 P1010931.JPG P1010929.JPG 後日、車椅子に乗った様子と写真を撮りに行く予定をしておりました。 ですが、10日後にボブ君のお父さんより電話でお別れの日が近づいて来たとの 連絡がありました。 ご飯も食べる事ができず、今は点滴をしているそうです。そして・・・とても残念です。 車椅子に乗っている散歩姿も、ボブ君の笑顔も見ることなく別れる事になりました。 飼い主様の心情はよく分かります。私も愛犬との別れの日が近づいているのを・・・ ボブ君ゆっくりと休んで下さい。 2件目にお伺いしたのが岐阜県に住んでいるトイプードルのエディ君 男の子8才です。 真っ黒で目がとても可愛いワンちゃんです。 どんぐりをあげると器用に皮をむいてくれるんです。 エディ君は遺伝性の軟骨が減少していく病気で、じん帯も切れリュウマチもあります。 立つ事は出来るのですが、前足も後ろ足も関節がガクガクで歩き回るのは中々困難です。 近所のワンちゃんの集まる公園に行くとみんな元気に走り回っているのですが、 エディ君はみんなについて行けず置いてきぼりになっているのを切なく思い、車椅子を 購入する事に決めました。 エディ君の車椅子は青白の千鳥柄の2輪車(名前入り)です。家の中でも乗れるよう4輪車 も製作しました。 P1010912.JPGP1020177.JPG 練習用の4輪車です。 P1010971a.jpg リハビリ用レッグツリー試作してみました。P1020043.JPGP1020055.JPG エディ君ママもとても愛情深い飼い主様でラフ君にも気をつかって頂き 大変感謝致します。 エディ君もみんなと一緒に走り回る散歩姿を楽しみに待っています。 3件目は名古屋市に住んでいるシーズー犬のないろちゃん14才位? 飼い主さんとないろちゃんの出会いは12年前に車を運転中、道路をウロウロしている ワンちゃんを目撃、車にひかれてしまいそうなのでワンちゃんを保護し、交番に届けた そうです。 後日、交番に行ってみると警察の手違いでまだその交番にいました。 このまま飼い主様の申し出が無い場合は数日後には処分されると聞いて家に連れて帰り 家族の一員になりました。 その後も、2匹のワンちゃんも増え3匹のワンちゃんと幸せな時を過ごしてきました。 ですが、数年前から老犬に加え病気も発症し寝たきり状態です。顔を動かす事も 寝返りする事も出来ないんです。目も白内障で少しか見えず、 オシッコはか細い声で鳴くとないろちゃんママが外に連れていきオシッコをさせています。 オムツは嫌がる様なので出来ないそうです。 私はお話をお伺いし、体の状態も考え製作をお断りしようと思いその旨をお伝えしました。 そして私がないろちゃんに一杯愛情を貰っているねハート(トランプ)と声をかけたら、ないろちゃんママが それ以上の幸せをこの子から貰って来ました。 最後に一度だけ・一度だけでいいから散歩させてあげたいんです。と言われ、 私は心に有ったモヤモヤが取れ、作る事に決めました。 ないろちゃんの様態から見ると明日にでも天国に旅立ってしまってもおかしくありません。 急がなくてはと思い、既にご注文を頂いているお客様に事情を説明させてもらい、 優先で製作させて頂きました。 皆さん快く承諾して頂き大変有難うございました。 そして2輪車と4輪車を製作し、納品にお伺い致しました。 P1010895.JPG やはり2輪車では弱った前足には少し早いようで、4輪車に乗せてみました。 P1010959.JPGP1010956.JPG すると歩いているのです!確かに自分の足で車椅子を動かしています。 P1010963.JPG そして一番にラフ君のそばに駆け寄り何か話しかけています。次に私のもとに来てくれて 何か話しています。それは間違いなく車椅子ありがとうと聞こえました。私達の目には涙が浮かび、 とても印象的な場面でした。 P1010964.JPG 間に合って良かった。そして飼い主様とないろちゃんの笑顔を見る事が出来、 本当に良かった。 帰宅後もないろちゃんママよりメールが届いていました。 公園に散歩に行き小走りに走るないろちゃんとの心癒される内容のメールでした。 そして1ヶ月後にもないろちゃんママからのメールです。 メールを開けてみると・・・それは・・・悲しいお知らせでした。 ないろは夫に抱かれて虹の橋のたもとのお花畑へと旅立ちました・・・ 私たちにも感謝のお言葉も添えて頂き涙が止まりません。 やっとラフ君もお友達が出来たのにとても残念です。一緒に車椅子でツーリング したかった。ラフ君もいずれ天国に行ってしまいます。その時は又、お友達に なって下さいね。 私も仕事柄 健常なワンちゃんと出会うよりも障害を持ったワンちゃんと出会う 方が多いのです。 出会いがあれば別れがあるといいますが、出会ってからお別れするまで短過ぎる と思いませんか?とても切なく思う時があります。 私にはこの仕事が合っていないのかと心が折れる時があります。 それを支えてくれているのが、飼い主様からの感謝のお言葉や車椅子に乗っている 写真を頂く事です。それが何よりの励みになっています。 飼い主様の不安な気持ちと愛犬が歩けないストレスを少しでも癒してくれるまさに 魔法の車椅子です。 これからもいつも応援してくれている家族と一緒に魔法の車椅子を作って いきたいと思います。